Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2013年9月9日月曜日

リーガル・ドラマはなぜかくもこうおもしろいのか


数あるジャンルの中でも訴訟もののドラマ、映画は大好物でついつい見てしまいます。
まあ現実の訴訟よりも脚色され、単純化されているのは否めないですが、だからこそ取っ付き易くのめり込みやすいのでしょう。
とはいえ『それでもボクはやってない』など、いつ自分の身に降りかかるかもしれない事案などは、一度自分を主人公に憑依させることで、擬似的に経験しておくことで、万が一痴漢事件に巻き込まれた時に正しい行動をできる蓋然性は高まりそうです。

べつに話題のテレビドラマや映画などのすべてを追って、時勢をの波から取り残されないようにしているわけではないですが、ある程度、今の世間の趨勢を把握しておくという意味ではそういったコンテンツをうまい具合につまみ食いするというのが僕のやり方です。
たしかに視聴率などの数値は数々の批判がつきまとうように絶対的な指標とは言いがたいものの、やはり相対的には参考になる値です。
視聴率が高いには高いなりの理由がある。他を出し抜きそれなりの数字の叩きだす背景にはバズ要因が必ず伏在している。それで一見してみようとなるわけです。
こういった数値を手がかかりにコンテンツを漁るのも一手法ですが、映画・ドラマ等に限らず、読書でも舞台でもなんでも、その界の自分の嗜好に合ったキュレーターを幾人かフォローしておくのが一番スマートなやり方な気がします。
自分で全方位をフォローするのはいかせん能率が悪いし、必ず"こぼれ"が出てしまう。
RSSリーダー、GunosyAntennaのような感覚を、インフルエンサーに付与する、というより見出す。


という前置きを説明した上で、あくまで世俗的なバラエティやドラマ方面のアンテナ感度がかなり高いのが南海キャンディーズの山ちゃん。
彼がアイドル業界に深い造詣を持っているのは周知ですが、それに限らずジャンルを問わないバラエティ、ドラマ類にも広いアンテナを張り巡らし、面白いと思ったものをすぐにメディアで発言しているので、僕もたまに参考にしてます。
リーガル・ハイ』はラジオで山ちゃんが推していたもので、むしろ『半沢直樹』以上に役者・堺雅人が全面に出ているとオススメしていたので、僕も3日くらいでSPも含めた通常放送を見てしまいました。

『リーガル・ハイ』を観ていて思うのは、弁が立つものが正義というか、周りの群衆を飲み込んでいくということ。時代は常にそうあり続けたのではないかということ。
最近でいえば、大阪市長の橋下徹さん、自民党の小泉進次郎さん。雄弁な語り口の人の周りには人が集まってくる。

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このドラマで主人公・古美門研介を演じる堺雅人も人格は最低でありながらも、マシンガンのように繰り出す理路整然かつ根拠に基づく弁証は見事というほかない。
そして度々、諜報員を雇い法律すれすれの工作活動をしたり、巧みにお金を使ったり、「法」や「裁判」が腹蔵する脆弱性を逆手にとり、無敗神話を築き上げていく。
その法律事務所に新人弁護士として入るのが新垣結衣演じる黛真知子。彼女は生来の真面目な女性で、無垢な正義心の塊、本当の「真理」の探求のため、あえて古美門事務所の門を叩く。
と、まあこのドラマの内容をつらつら述べてても仕方ないのですが、キャッチコピーで「愛も、法も、嘘がすき。」と掲げられているように、古美門に言わせれば、正義に基づく真理などあり得ないということ。


なにも日本だけに特有の問題なのではなく、とくにアメリカではより深刻にそういった脆弱性が表出しているといっていいと思います。
このドラマでもお金を持つものが弱者を握りつぶそうとする描写は幾度となく出てきますが、アメリカでもこの問題は根深く、大企業を相手にしたとき、個人が戦える素地はほぼないのが現状となっています。この辺の話はやはり堤未果さんの『(株)貧困大国アメリカ』に譲ります。

パスカル

力=資本(金)の論理の前に、司法も民主主義も無力ということでしょうか。
怜悧な炯眼に満ちた随想録『パンセ』でパスカルは以下の様なことを述べています。
「正義。力。正しい者に従うのは、正しいことであり、最も強い者に従うのは必然のことである。力のない正義は無力であり、正義のない力は圧制的であるこのようにして人は、正しい者を強くできなかったので、強い者を正しいとしたのである」
身震いします。

『リーガル・ハイ』ではあらゆる争点領域で古美門研介が顔を出し、見事に勝利を収めていきますが、じっさいの弁護士稼業としては、あり得ないことではないかと思います。
普通は得意とする領野が決まっているのが定石ではないかと。
たとえば第9〜10話にかけては村人たちが団結して、環境問題を理由として大企業を訴える訴訟を起こすのですが、これはジュリア・ロバーツ主演の実話に基づく映画『エリン・ブロコビッチ』で描かれていたような内容に近いです。

検察側の視点のドラマの筆頭ではやはりキムタク主演の『HERO』ですかね。
古典としては、僕も大学時代の英語の授業の教材で観た『十二人の怒れる男』が有名どころでしょうか。

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