Each day is a little life: every waking and rising a little birth, every fresh morning a little youth, every going to rest and sleep a little death. - Arthur Schopenhauer

2011年11月8日火曜日

読書『スティーブ・ジョブズII』ウォルター・アイザックソン著

Forever Young/ Bob Dylan

「革命を起こしたいと君はいう」


ジョブズがこの世を去ってから一ヶ月あまりが過ぎました。
おとといAmazonから届いた予約しておいた彼の評伝の下巻を一気に読み終えました。

上巻の時にも増して、ぼくは一心不乱にページをめくりました。
時々、立ち止まっては目を閉じて彼の言葉を何度も頭の中で反芻し、咀嚼してみながら。

スティーブ・ジョブズの物語は、そのまま、シリコンバレーの創造神話となる- ガレージで起業し、世界一の会社に育て上げたのだから。
筆者はわたしたちにこのように問いかけます。
彼の生い立ち、生き様、生き抜いた轍はシリコンバレーに刻み込まれ、これまでもこれからも若者たちを魅了してやまないでしょう。

ぼくはこの本から大きく2つのことを学びました「集中と選択」「死と向き合うことです」

まずは前者から。
「何をしないか決めるのは、何をするのか決めるのと同じくらい大事だ」
ジョブズはこう言います。
誰一人としてスーパーマンでなければ聖徳太子のように一度に複数の動作を器用にこなせないのです。
適切に選択し、注力することが肝要なのです。
また彼は終始の哲学として「シンプルさ」を追い求めました。
「シンプルなものが良いと感じるのはなぜでしょうか?我々は、物理的なモノに対し、それが自分の支配下にあると感じる必要があるからです。複雑さを整理し、秩序をもたらせば、人を尊重する製品にできます」 
筆者はこのように彼を評します。
集中力もシンプルさに対する愛も、「禅によるものだ」とジョブズは言う。禅を通じてジョブズは直感力を研ぎ澄まし、注意をそらす存在や不要なものを意識から追い出す方法を学び、ミニマリズムに基づく美的感覚を身につけたのだ。 
「より少なく、しかしより良く」を追い続けたのです。
だからこそ彼は上辺だけの飾りを嫌います。
「考えもせずにスライドプレゼンテーションをしようとするのが嫌でねぇ。プレゼンテーションをするのが問題への対処だと思ってる。次々とスライドなんか見せず、ちゃんと問題に向き合ってほしい。課題を徹底的に吟味してほしいんだ。自分の仕事をちゃんとわかっている人はパワーポイントなんかいらないよ」 
彼の経営哲学から導きだされたアップルの綱領は
詩心と工学の融合、芸術・創造性と技術の交わり、大胆でシンプルなデザイン。 
ビル・ゲイツもこのように賛辞します。
「大きな意味をもつごく少数のものに集中する力、優れたインターフェイスを作る人材を確保する力、製品を革新的にしてマーケティングする力という意味でスティーブ・ジョブズはとにかくすごい」 
書き始めるとキリがありません。多くの人々が彼に敬意を評し、畏怖をも抱いていました。
それでは「死と向き合うこと」に話を移します。

「受け継がれていくもの、輝く創造の天空」

 

死はいつでも彼の側にいました、とりわけ膵臓癌が彼を蝕み始めた時から特に強く死を意識しはじめます。
有名なスタンフォードでのスピーチにもそのことが主題としてあらわれます。
人生を左右する分かれ道を選ぶ時、一番頼りになるのは、いつかは死ぬ身だと知っていることだと思います。ほとんどのことが- 周囲の期待、プライド、ばつの悪い思いや失敗の恋の恐怖など- そういうものすべてが、死に直面するとどこかに行ってしまい、本当に大事なことだけが残るからです。自分はいつか死ぬという意識があれば、なにかを失うと心配する落とし穴にはまらずにすむのです。人とは脆弱なものです。自分の心に従わない理由などありません。
ジョブズは毎朝、鏡に向き合い、自分自身に問いかけることを日課にしていたそうです。
「いま自分がしていることを、今日が人生最後に日だったとしてもやるだろうか」
村上春樹さんが言うように「死は生の対極にあるのではなく、生の一部としてあるのだ」まさしくジョブズは肌身をもってこれを知っていました。

ジョブズはボブ・ディランにも強い影響を受けています。
ディランの有名な言葉に次の一説があります。
「生きるのに忙しくなければ、死ぬのに忙しくなってしまう」 
メメント・モリ=死を忘れるなかれ 」を瞬間、瞬間に刻み、自身に問いながら邁進し、決断を下し、数々のプロダクトを産み落としていったのでしょう。


ジョブズはいくつも示唆的で尊い言葉を残していますが、ぼくのお気に入りは妻ローリーンとの結婚20周年のとき、彼女に手紙で綴った言葉です。
「20年前はお互い、あまりよく知らなかったよね。あのころ僕らは自分の心に導かれていた。僕は一目で君に夢中になったんだ。アワニーで結婚したとき、外は雪が降っていたね。月日が流れ、子どもたちが生まれた。いいときも厳しい時もあった。でも悪い時はなかった。僕らの愛も敬意も時の流れに耐えて成長した。ふたりでいろいろなことを経験してきたね。そしていま、僕らは、20年前にふたりで歩きはじめた場所に戻ってきた。年を取り、賢くなって、顔にも心にもたくさんのシワを刻んでね。僕らは人生の喜びも苦しみも秘め事も驚きもたくさん経験して、その上でこうしていっしょにいるんだ。僕はいまも君に夢中だ」
ジョブズはわたしたちに生きていくことのヒントをいくつも与えてくれます。
だれだって死ぬのです。ジョブズも死ぬのです。不老不死のスーパーマンはスクリーンの中だけで、だれもがいつかは死ぬのです。
生きていくことは、先の見えない暗がりをゆっくり進んでいく不安でたまらないことです。
それもみんな一緒です。本当に悩みのない人などいないのです。
もがいて、生きている意味を考えて、価値を見出して、大切な人ができて、何かをやり遂げて、逝く。
ジョブズはいくつもの過去に類をみないプロダクトをうみだしては、わたしたちの生活を向上させてきました。
彼もたくさんのことを犠牲にしたことでしょう。
それでも彼は人生に意味を見出していたし、わたしたちに、世界に、人類に、「新たな価値」を創造しました。
さて、ぼくはどうでしょうか。



参考エントリー:『スティーブ・ジョブズ I 』
大学生ブログ選手権

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